
腰痛治療などに関するエビデンス(科学的根拠)です。
EBM(科学的根拠に基づく医療)の定義は「エビデンス」「患者の状況」「患者の価値観」「術者の臨床技能」の4つを統合することですから、エビデンスはEBMの構成要素の一つで、それを知ったからといって必ずしも良い施術を受けられるとは限りません。しかし、知識を持っておくことで、医者からの診断に対して過剰な不安を感じることもありませんし、勧められる治療法を鵜呑みにすることなく、選択肢を持つことができると思います。
下記に掲げる研究レポートを簡単にまとめますと、
腰痛を怖がり、安静に寝ていると回復が大幅に遅れる。
急性腰痛を早く改善させるコツは日常生活を維持すること。
急性腰痛の86.2%は2週間以内に治癒する。
腰痛の回復を妨げているのは心理社会的因子である。
腰の牽引は効果がない。
腰の反り、側彎(そくわん)症は腰痛と関係ない。
椎間板変性、ヘルニアは腰痛との関連性が見られない。
腰が痛くない健常者にも椎間板ヘルニアや椎間板変性等は存在している。
※急性腰痛=ギックリ腰
※心理社会的因子=家庭や職場などの社会的環境の対人関係のストレスや諸々不安、孤立感等
そして、もっと簡単にまとめると、
「腰痛の原因は分からないが、自然と治るものである」です。
欧州のドクターは「腰痛は風邪と同じです」と説明するそうです。
風邪は暫くすれば、必ず治りますよね。治らない風邪はありません。
必要以上に不安を抱えず、いつもの日常生活をおくることで本来、
腰痛は自然と治っていくものなのです。必要以上に心配する必要は
ありません。

腰痛治療などに関するエビデンス(科学的根拠)
知識を持っておくことで、医者からの診断に対して過剰な不安を感じることもありませんし、勧められる治療法を鵜呑みにすることなく、選択肢を持つことができると思います。
以下の研究レポートを簡単にまとめると、
腰痛を怖がり、安静に寝ていると回復が大幅に遅れる。
急性腰痛を早く改善させるコツは日常生活を維持すること。
急性腰痛の86.2%は2週間以内に治癒する。
腰痛の回復を妨げているのは心理社会的因子である。
腰の牽引は効果がない。
腰の反り、側彎(そくわん)症は腰痛と関係ない。
椎間板変性、ヘルニアは腰痛との関連性が見られない。
腰が痛くない健常者にも椎間板ヘルニアや椎間板変性等は存在している。
※急性腰痛=ギックリ腰
※心理社会的因子=家庭や職場などの社会的環境の対人関係のストレスや諸々不安、孤立感等
そして、もっと簡単にまとめると、
「腰痛の原因は分からないが、自然と治るものである」です。
欧州のドクターは
「腰痛は風邪と同じ」と
説明するそうです。
風邪は暫くすれば、必ず治りますよね。治らない風邪はありません。必要以上に不安を抱えず、いつもの日常生活をおくることで本来、腰痛は自然と治っていくものなのです。必要以上に心配する必要はありません。
腰痛に関する海外の研究レポート
イギリスの腰痛診療ガイドラインは心理社会的因子について次の4つの事実を指摘している。
(1)心理社会的因子は治療とリハビリテーションの成績に影響を与える。
(2)心理社会的因子は自覚症状や他覚所見よりも慢性化の危険因子である。→HP記事へ
(3)心理社会的因子は慢性腰痛や活動障害において重要な意味を持つ。
(4)心理社会的因子はこれまで考えられていたよりもはるかに早い段階で重要な意味を持つ。
ゆえに、患者の心理的・職業的・社会経済的因子に目を向ける必要がある。→HP記事へ
椎間板ヘルニアと診断された下肢痛患者328名を椎間板摘出術群と標準的顕微鏡下椎間板摘出群に割り付けたRCTによると、疼痛改善率は手術群より顕微鏡手術群の方が優れていた。→HP記事へ
50~94歳の1407名を対象に骨密度とX線撮影で脊柱後湾(亀背)を調査した結果、椎体骨折のある方が後湾は強かったが多くの後湾に骨折は認められなかった。高度後湾の場合でも椎体骨折や骨粗鬆症は確認できなかった。原因不明。→HP記事へ
脊柱の高度後湾(亀背)は高齢者の20~40%に見られると推計されるが、診断基準もなければ原因も転帰も明らかでない。一部の医師は骨粗鬆症による椎体骨折が原因と考えているものの、その多くは椎体骨折が認められない。原因不明。
脊柱の高度後湾は高齢者の不健康と関連がある。したがって高度後湾を老年期症候群、すなわち人体の複数のシステムが障害され、その影響が蓄積されて環境の変化への対応が難しくなると発症する、多因子性の病態と認識すべきである。
脊椎固定術を受けた労災患者と保存療法を受けた患者を比較した後ろ向きコホート研究によると、椎間板変性、椎間板ヘルニア、神経根障害と診断された労災患者の固定術は、活動障害、オピオイドの使用、長期欠勤、復職困難を増加させる。
脊椎固定術を受けた783名の中から労災患者60名の転帰を調べた結果、2年後の改善率は活動障害が19%、健康状態が16%でしかなく、疼痛スコアもかなり高かったことから、労災患者に対する脊椎固定術は危険な賭けでしかない。
脊椎固定術を受けた労災患者1950名を対象とした後ろ向きコホート研究によると、術後2年後の活動障害は63.9%、再手術率は22%、合併症は11.8%に認められた。長期活動障害の予測因子は心理社会的因子であることが判明。
腰痛で長期欠勤している患者975名を3年間追跡したランダム化比較試験によると、200日後の復職率は教育プログラム(従来の常識はすべて忘れて腰痛を怖がるなという指導)群が70%だったのに対して、標準的治療群はわずか40%でしかなかった。→HP記事へ
腰痛患者161名を時代遅れの小冊子群と新たな腰痛概念に基づく小冊子群に割り付けて1年間追跡した比較試験によると、新たな小冊子群は動作恐怖が低下すると共に回復が早いことが判明。従来の考え方を改めるのは有効な治療法である。→HP記事へ
オーストラリアのビクトリア州で「腰痛に屈するな」という大規模なメディアキャンペーンを実施し、近隣のニューサウスウェールズ州と比較した結果、次の4点が明らかとなった。→HP記事へ
(1)キャンペーン群では腰痛患者の動作恐怖スコアが改善した。
(2)キャンペーン群では腰痛による欠勤日数が減少した。
(3)キャンペーン群の労災申請件数は15%減少した。→HP記事へ
(4)キャンペーン群の医療費は20%減少した。
すなわち、正しい情報提供だけで33億円を超える経費(労災補償費と医療費)を削減できたのである。日本でできないはずがない。→HP記事へ
椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を厳密に検討した結果、椎間板ヘルニアの手術成績は短期的に見れば良好だが長期的に見れば保存療法とほとんど変わりがなく、腰痛は心理社会的因子の影響を強く受けていることが確認された。→HP記事へ
腰・下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者84名を対象に、画像所見、理学所見、心理テストと手術成績との関係を調べた結果、手術成績と最も関係が深かったのは、画像所見でも理学所見でもなく心理テストだったことが判明。→HP記事へ
椎間板切除術を受けた患者45名の治療成績に影響を与える因子を分析した結果、職場復帰状況は画像所見や臨床症状とは無関係で、心理的因子(抑うつ)と職業上の心理社会的因子(職場での心理的ストレス)の影響が強いことを確認。→HP記事へ
椎間板ヘルニアと診断された腰下肢痛患者46名と健常者46名をMRIで比較した結果、症状の有無は職業上の問題(心理的ストレス・集中力・満足度・失業)と心理社会的問題(不安・抑うつ・欲求不満・夫婦関係)の影響が大きい。→HP記事へ
腰痛のない大学生25名を対象に腰への負担に対する心理テストと性格特性の影響力を調べた結果、心理的ストレスは単独で腰痛の原因になり得るだけでなく、内向型と直感型の性格特性は心理的ストレスによって腰痛発症リスクが増大する。→HP記事へ
腰下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者69名を対象に、椎弓切除術群と椎弓切除術+固定術群の術後成績を3年間追跡した比較試験によると、優または良と評価できた割合は椎弓切除術群が71%で椎弓切除術+固定術群が53%だった。→HP記事へ
脊柱管狭窄を伴う変性すべり症患者76名を対象に、器具固定群と骨移植固定群の術後成績を2年間追跡した比較試験によると、器具固定によって骨癒合率の向上は認められるものの、それが必ずしも臨床症状の改善に結びつかないことが判明。→HP記事へ
慢性腰痛を訴える変性すべり症患者130名を対象に、器具固定群と骨移植固定群の術後成績を2年間追跡した比較試験によると、骨癒合率と満足度に差はないが器具固定群は手術時間、出血量、再手術率を増大させ、深刻な神経損傷を招く危険性大。→HP記事へ
分離すべり症患者44名を対象に、腰椎後側方固定術群と後方侵入腰椎椎体間固定術群の術後成績を2年間追跡した比較試験によると、複雑で大がかりな手術よりも比較的単純な方が成績は良いことが判明。→HP記事へ
脊椎固定術に関する論文47件を厳密に検討した結果、優または良と評価できたのは平均68%だったが、論文によっては15%~95%の開きがあり、研究デザインにも不備があるため脊椎固定術の有効性を示す証拠は見つけられなかった。→HP記事へ
脊柱管狭窄症と診断された腰下肢痛患者88名を対象に減圧椎弓切除術の成績を6年間追跡した結果、1年後の改善率は89%だったが6年後には57%に低下し17%は再手術を受けていたことから、これまで報告されていた成績より悪い。→HP記事へ
脊柱管狭窄症への減圧椎弓切除術に関する論文74件を厳密に検討した結果、優または良と評価できたのは平均64%だったが、論文によっては26%~100%もの開きがあり、研究デザインにも不備が多いためその有効性は証明できない。→HP記事へ
腰痛患者520名を対象に診療ガイドラインに従った治療群と従来の治療群の治癒率、再発率、満足度、医療費を1年間追跡して比較した研究によると、従来の治療群よりガイドライン群の方がすべての面でかなり優れていることが判明。→HP記事へ
ありふれた症状を訴える患者200名をプラス思考で接した治療群と無治療群、マイナス思考で接した治療群と無治療群に割りつけた比較試験によると、2週間後の改善率は治療の有無に関わらずプラス思考で接した群の方がはるかに高かった。→HP記事へ
患者に不安や恐怖を与えると間違いなく痛みが増幅する。このノーシーボ効果は想像以上に強力で、ヴードゥー死、タブー死、ノスタルジー死で証明されているように命に関わることさえある。→HP記事へ
椎間関節症候群への注射療法に関する論文を厳密に分析した結果、椎間関節内へのプラシーボ(生理食塩水)注射は、ステロイド剤や局所麻酔剤と同等の改善効果があることから、椎間関節症候群という病名自体が神話の可能性がある。→HP記事へ
腰下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者52名を対象に、ラブ法群とキモパパイン注入群の術後成績を1年間追跡した比較試験によると、ラブ法群は85%でキモパパイン群は46%の改善率だった。腰痛の改善率も特にラブ法群が優れていた。→HP記事へ
※ラブ法:ヘルニア(髄核が飛び出た部分)を切除する手術方法
※キモパイン注入:タンパク質融解酵素を用いて髄核を溶かす方法
坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者141名を対象に、キモパパイン注入群と経皮的髄核摘出術群の術後成績を1年間追跡した比較試験によると、6ヶ月後と1年後のどの時点においても改善率はキモパパイン注入群の方が優れていた。→HP記事へ
坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者126名を対象に、保存療法群とラブ法群の治療成績を10年間追跡した比較試験によると、1年目まではラブ法群が優れていたが4年目以降は両群間に差はなくなっていた。長期成績は両群とも同じ。→HP記事へ
椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を分析した結果次の6点が判明した。
(1)椎間板ヘルニアが確認された2ヶ月間の保存療法に反応しない坐骨神経痛患者はそのまま保存療法を
続けるよりラブ法を実施した方が早く改善する。→HP記事へ
(2)4年~10年の長期成績という観点から見るとラブ法と保存療法の効果に差は認められない。
(3)顕微鏡下髄核摘出術と経皮的髄核摘出術が腰痛に効果があるという証拠はない。
(4)経皮的髄核摘出術はラブ法より再手術率が高い。→HP記事へ
(5)椎間板摘出術は比較的安全な治療法とされているが、これまで考えられていた以上に再手術を
必要とする例が多い。
(6)椎間板ヘルニアに対する手術成績は、心理社会的因子の影響を強く受けている。→HP記事へ
椎間板摘出術が予定されていた腰下肢痛患者84名の治療成績を、神経学的所見、SLR、画像所見、心理テストの4項目で比較した結果、治療成績と最も関係が深かったのは、理学所見や画像所見ではなく心理テストだったことが判明。→HP記事へ
椎間板摘出術を受けた患者46名を2年間にわたって追跡調査した結果、職場復帰には心理的因子(抑うつ状態)と職業上の心理社会的因子(職場での精神的ストレス)が深く関与していて、画像所見や臨床症状は無関係であることが判明。→HP記事へ
■腰痛に対する脊椎マニピュレーションに関する論文58件をメタ分析した結果、3週間以内に腰痛が回復する確率は50~67%だった。慢性腰痛に対する効果は不明としながらも、急性の非特異的腰痛には一時的な効果があることが判明。→HP記事へ
■筋骨格系疾患に対する超音波療法に関する123件の論文を吟味した結果、超音波療法が有効だという科学的証拠は確認できなかったことから、超音波療法をはじめとする受け身的な物理療法は、臨床的に何ら影響をおよぼさないと結論。→HP記事へ
■慢性疼痛に対する鍼治療の有効性に関する51件の比較試験を吟味した結果、鍼治療の効果はきわめて疑わしいと結論。鍼治療の有効性を主張するにはさらなる臨床試験が必要。いずれにしろ物理療法の有効性は科学的に証明されていない。→HP記事へ
■立ち仕事をしている女性の腰痛患者96名を対象に行なったクロスオーバー試験によると、インソールの使用によって腰痛が緩和したのは44%で、3%は悪化し、51%は変化がなかった。インソールは立ち仕事での腰痛を緩和する可能性(44%だけど)。→HP記事へ
■腰痛患者144名と健常者138名を対象に骨盤の歪みを厳密に測定して腰痛との関連を調べた結果、どのような臨床的意義においても骨盤の非対称性と腰痛は関連していないことが判明。骨盤の歪みが腰痛の原因というのは迷信に過ぎない。→HP記事へ
■18~40歳までの急性腰痛患者を対象に4週間追跡した比較試験によると、モビリゼーション群とマニピュレーション群の改善率は4週間後には差がなくなるものの、マニピュレーション群は最初の1週間で急速に改善することが判明。→HP記事へ
■小売店の資材運搬担当者9,377名を対象とした6ヶ月にわたる前向きコホート研究によると、腰部サポートベルト毎日装着群、週1~2日装着群、非装着群の3群を比較した結果、腰痛発症率も労災申請件数も減少しなかった。→HP記事へ
■急性腰痛患者186名を対象に2日間の安静臥床群、ストレッチ群、日常生活群に割り付けた比較試験によると、ストレッチ群は安静臥床群より欠勤日数が少ないものの日常生活群には及ばないことが判明。急性腰痛の特効薬は日常生活の維持。→HP記事へ
■健常者402名を腹筋強化運動+教育プログラム群と教育プログラム群の2群に割り付けて2年間追跡した比較試験によると、両群間の腰痛発症率には差が認められなかったことから、腹筋強化運動は腰痛を予防できないことが判明。→HP記事へ
■航空機製造会社に勤務する3020名を対象とした4年以上にわたる前向きコホート研究では、腰の柔軟性を測定することで過去の腰痛歴や将来の腰痛発症率は予測できないことが判明。腰痛疾患に対するストレッチの有効性に疑問あり。→HP記事へ
■ストレッチ運動と筋肉痛やスポーツ外傷に関する7件の比較試験を吟味した体系的レビューの結果、運動前後のストレッチ運動では筋肉痛を予防できないし、スポーツの前にストレッチ運動を行なってもスポーツ外傷は予防できないことが判明。→HP記事へ
■腰痛に対する運動療法をテーマとした11件の比較試験をレビューした結果、急性腰痛(6週未満)に有効な運動療法は存在しないものの、亜急性腰痛(6週~3ヶ月未満)や慢性腰痛(3ヶ月以上)には運動療法が有効であることが判明。→HP記事へ
■27,801名を対象としたアンケート調査から、急性腰痛患者の86.2%は2週間以内に治癒することが判明。この86%という自然治癒率とプラシーボの70%を超えられない治療法は価値がないどころか治癒を妨げていることになる。→HP記事へ
■急性腰痛患者203名を対象に2日間の安静臥床群と7日間の安静臥床群を比較した比較試験によると、3週間後の欠勤日数は2日間の安静臥床群の方が45%少なかった。急性腰痛に対する安静臥床は欠勤日数を増やすことが証明される。→HP記事へ
■1966年~1996年に発表された急性腰痛患者に対するアドバイスに関する論文をレビューした結果、安静臥床は効果がないばかりか回復を遅らせるが、日常生活を続けると職場復帰が早く、慢性化を防ぎ、再発率も低下することが判明。→HP記事へ
■安静臥床に関する39件の比較試験をレビューした結果、安静臥床によって改善が認められた研究はひとつも存在しない。激痛のために動けない場合は別として、急性腰痛患者が安静に寝ているのは有害で危険な行為。即刻やめさせるべき。→HP記事へ
■6週間以上持続する腰痛患者151名を対象とした牽引群とシャム(見せかけ)トリートメント(擬似牽引)群に割り付けたランダム化比較試験(RCT)によると、3ヵ月後と6ヵ月後のどの時点においても両群間の疼痛軽減率に差は認められなかった。→HP記事へ
■坐骨神経痛患者を対象とした牽引群とシャムトリートメント(擬似牽引)群に割り付けた二重盲検ランダム化比較試験によると、両群の間に疼痛や理学所見の差は認められなかった。腰痛や坐骨神経痛に対して牽引が有効だという証拠はない。→HP記事へ
■頚部痛と腰痛に対する牽引に関する7件のRCT(ランダム化比較試験)をレビュー(批判的に吟味)した結果、どの研究からも牽引の有効性は認められなかった。腰痛や坐骨神経痛に牽引が有効だという証拠は今のところ存在しない。→HP記事へ
■腰のX線撮影による放射線被曝量は、胸の写真に換算すると150回分に相当し、4方向から撮影した場合、卵巣への被曝量は6年~98年間毎日、胸の写真を撮った被曝量に匹敵。→HP記事へ
■腰痛患者421名をX線撮影群と非撮影群に割り付け、9ヶ月間にわたって追跡調査した結果、非撮影群に比べるとX線撮影群は痛みの持続期間、活動障害、健康状態の成績が悪く、受診回数も多かった。不安や恐怖は治癒を妨げている。→HP記事へ
■1985年~1995年に発表された腰痛疾患と画像検査に関する論文672件をレビューした結果、画像所見と腰痛との間に関連があるという証拠は見出せなかった。レッドフラッグ(重篤な危険徴候、例えばガンなど)のない腰痛患者の画像検査は無意味である可能性大。→HP記事へ
■5つの異なる職種の男性149名を対象に、1年間にわたってMRIで腰部を観察した結果、椎間板変性と腰痛との関連はない、職種による異常検出率に差はない、調査期間中に13名が腰痛を発症したがMRI所見に変化はないことが判明。→HP記事へ
■腰痛経験もなくX線所見も異常のないボランティア受刑者50名を対象に、腰部椎間板造影を行なったところ、全例に異常所見が確認された。重大な合併症の危険を冒してまで、侵襲的な椎間板造影を行なうメリットはどこにあるのか?。→HP記事へ
■坐骨神経痛患者55名と健常者37名を対象に、腰部サーモグラフィーの診断精度を比較した結果、健常者の56~81%に異常所見が確認されたことから、腰下肢痛疾患の診断にサーモグラフィーは役立たないことが判明。→HP記事へ
■各国の腰痛診療ガイドラインはレッドフラッグのない患者に画像診断をするなと勧告しているが、レッドフラッグは問診と簡単な理学検査で検出できる。しかし完全無欠というわけではない。感度と特異度もしっかり頭に入れておくべき。→HP記事へ
■1966年~1991年に発表された椎間板ヘルニアに対する脊椎固定術に関する47件の論文をレビューしたところ、脊椎固定術によって優または良と評価できた割合は平均68%だったことが判明。平均70%のプラシーボとほぼ同等。→HP記事へ
■妊婦54名と非妊婦41名の腰部椎間板をMRIで比較した結果、椎間板異常は妊婦群で53%、非妊婦群で54%、椎間板ヘルニアは妊婦群で9%、非妊婦群で10%、椎間板膨隆は両群とも44%と差がなかったことから、妊娠は安全。→HP記事へ
■急性腰痛患者200名、慢性腰痛患者200名、健常者200名を対象にX線撮影で仙骨底角を比較した結果、3群間に差はなかったことから、腰部前弯と腰痛とは一切無関係なので、医師は腰部前彎に関するコメントを控えるべきと警告。→HP記事へ
■腰痛のきっかけとなった出来事に関するアンケートの結果、経済的利益が得られる患者の90%がきっかけありと答えたのに対し、利益が得られない患者は33%しかきっかけありと答えなかった。腰痛の67%が自然発症することが判明。→HP記事へ
■この50年間、生体力学に基づく人間工学的アプローチによって腰にかかる負担は大幅に軽減されてきたが、腰痛患者が減少したという証拠は1つも存在しない。それどころか腰痛患者は年々増加し続けている。腰を守ろうとするのは逆効果。→HP記事へ
■腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した結果、腰痛患者の30%に脊柱側彎症が、1%に前彎過剰が、22%に前彎減少が見られ、健常者の45.5%に脊柱側彎症が、2.5%に前彎過剰が、22%に前彎減少が見られた。→HP記事へ
■腰痛のない25名の大学生を対象に腰椎への物理的負荷に対する心理的ストレスと性格特性の影響力を調べた結果、心理的ストレスは単独で腰痛の原因となり、特に内向型と直感型の性格特性は心理的ストレスで腰痛発症リスクが高くなる。→HP記事へ
■椎間板ヘルニアと診断された強い腰下肢痛を訴える患者46名と、年齢、性別、職業などを一致させた健常者46名の腰部椎間板をMRIで比較した結果、健常者の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性が確認された。→HP記事へ
■腰痛患者100名と健常者100名を対象に腰部X線写真を比較した研究では、両群間の腰仙移行椎、脊椎辷り症、潜在性二分脊椎、変形性脊椎症の検出率に差は認められなかった。画像検査による脊椎の異常所見は本当に腰痛の原因か?。→HP記事へ
■腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した結果、脊椎辷り症、腰仙移行椎、潜在性二分脊椎、椎間狭小、変形性脊椎症、脊柱側彎症、前彎過剰、前彎減少、骨粗鬆症、シュモール結節、圧迫骨折、骨盤傾斜の検出率に差はない。→HP記事へ
■18~50歳までの腰痛患者807名と健常者936名を対象に、腰部X線撮影で脊椎分離症の検出率を比較した結果、腰痛患者群は9.2%、健常者群は9.7%だった。脊椎分離症が腰下肢痛の原因と考えるのは非論理的。→HP記事へ
■発症後1年以内の腰痛患者144名と健常者138名を対象に、骨盤の歪みを厳密に測定して腰痛との関連を調べた研究により、どのような臨床的意義においても、骨盤の非対称性(歪み)と腰痛とは関連していないことが証明されている。→HP記事へ
■60歳の一般住民666名を対象に胸椎と腰椎のX線写真を分析した結果、腰痛経験者の58.7%に、未経験者の57.5%に変形性脊椎症が確認されたが、両群間の検出率に差はなかった。老化よる脊椎の変形は腰痛の原因ではない。→HP記事へ
■港湾労働就職希望者208名、急性腰痛を発症した港湾労働者207名、6ヶ月以上続いている慢性腰痛患者200名を対象に、腰部のX線写真の異常検出率を比較した結果、3群間の加齢による異常検出率に差は認められなかった。→HP記事へ
■腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した研究によると、両群間に変形性脊椎症、骨粗鬆症、椎体圧迫骨折などの異常検出率に差は認められなかった。したがって老化による解剖学的変化が腰痛の原因とは考えられないと結論。→HP記事へ
■健常者41名を対象に腰部椎間板を5年間にわたってMRIで追跡調査した結果、物理的負荷(重量物の挙上や運搬・腰の回転や屈曲等)という従来の危険因子は椎間板変性とは無関係で、腰痛発症率はむしろ椎間板変性のある方が低かった。
■男性の一卵性双生児115組を対象にMRIで椎間板変性を促進させる危険因子を調査した結果、椎間板変性は仕事やレジャーによる身体的負担、車の運転、喫煙習慣といった物理的因子より、遺伝的因子の影響を強く受けていることが判明。→HP記事へ
■21~80歳までの腰痛未経験者52名を対象にCATスキャンで腰部椎間板を分析した結果、年齢に関わらず35.4%に何らかの異常が検出され、40歳未満の19.5%に、40歳以上の26.9%に無症候性椎間板ヘルニアが確認。→HP記事へ
■20~80歳までの腰痛未経験者67名を対象にMRIで腰部椎間板を分析した結果、21~36%に椎間板ヘルニアが、50~79%に椎間板膨隆が、34~93%に椎間板変性が確認されたことから、手術の選択は慎重にすべきと結論。→HP記事へ
■20~80歳までの腰痛未経験者98名を対象にMRIで腰部椎間板を分析した結果、少なくとも1ヵ所以上の椎間板膨隆が52%、椎間板突出が27%、椎間板脱出が1%確認されたことから、腰痛下肢痛患者の異常所見は偶然の可能性。→HP記事へ
■急性腰痛患者186例を対象とした比較試験によると、安静臥床群、ストレッチ群、日常生活群のうち、最も早く回復したのは日常生活群で、最も回復が遅かったのは安静臥床群だった。腰痛に安静第一は間違い。むしろ回復を妨げる。→HP記事へ
■腰椎の変形が腰痛の原因でないことは半世紀以上も前から証明されてきた。最も古い対照試験は1953年に実施された腰痛患者100名と健常者100名の腰部X線写真を比較したもので、両群間の変形性脊椎症の検出率に差はなかった。→HP記事へ
■腰痛患者378名と健常者217名の腰部X線写真を比較した研究でも、両群間における変形性脊椎症の検出率に差はなく、加齢と共に増加する傾向が見られることから、変形は正常な老化現象にすぎず、腰痛の原因とは考えられないと結論。→HP記事へ
■「激しい」「突き刺ささる」「ヒリヒリする」等の言葉で頭を満たした場合、レーザー光による熱刺激に対する感受性が増大して疼痛感覚が増強される。痛みに関連した言葉と疼痛刺激が組み合わさるとプライミング効果で疼痛体験が雪だるま式に膨れ上がる。→HP記事へ
■fMRIを用いた研究によれば、痛みに関連した言葉とイメージを思い浮かべると脳のペインマトリックスが活性化するが、注意を逸らせると活性レベルが低下した。ゆえに痛みをくよくよ考えたり頻繁に話題にしたりする患者は自ら症状を悪化させている。→HP記事へ
■医師による患者を安心させる言葉は、腰痛の改善に大きな力を発揮するだろう。そして患者は腰痛についてくよくよ考え込まないこと、四六時中その痛みについて考えないことが重要である。腰痛のことで頭をいっぱいにすると、プライミング効果で疼痛強度が増す。
■これまで職場での身体的負荷(重量物の取り扱い、不自然な姿勢での作業など)、自動車の振動、喫煙などが椎間板変性を加速すると考えられていたが、一卵性双生児を対象とした比較研究によって身体的負荷よりもむしろ遺伝子の影響が大きいことを発見。→HP記事へ
■フィンランドの男性双生児600例を対象とした研究によって、BMI高値、引き上げ筋力が強い、作業強度が高いといった因子はすべて椎間板変性を遅らせるらしいということが、椎間板のMRI信号強度スコアから証明された。→HP記事へ
■医療提供者は腰痛に関する患者の誤解を解くと共に、効果的な管理へ導かなければならない。「患者は生体力学的な視点から生体力学的な異常が見つかることを期待している。何らかの形で我々が患者にそのような考え方を教えてきたのである。患者にも再考を迫る必要がある」by David Shute
■現在の腰痛管理システムはけっして理想的なものではなく、腰痛を悪化させる可能性すらあることを示す豊富なエビデンスがある。→HP記事へ
■ノースカロライナ州の地域住民を対象とした最近の研究によると、慢性腰痛があると回答した成人の割合は、1992年には3.9%だったものが2006年には10.2%にまで増加している。腰痛を生物・心理・社会的問題として対処しないからだ。→HP記事へ
■2年間にわたる追跡調査によると、坐骨神経痛を有する椎間板ヘルニアの手術は保存療法より有益とはいえない。職場復帰率や長期活動障害率においても手術の優位性は認められなかった。坐骨神経痛は手術を受けるか否かに関わらず時間が経てば改善する。→HP記事へ
■坐骨神経痛に対する椎間板手術は、保存療法よりある程度の優位性を示すものの一過性でしかない。ノルウェーの比較試験では1~4年間優位性が持続したが 、オランダの比較試験では1年未満だった。→HP記事へ、→HP記事へ
■精神療法が慢性腰痛の有効な治療法になり得るという考えを理解するのは、患者にとっても医師にとっても難しい。腰痛は身体的に治療されるべき症状であり、腰痛が改善すれば身体的問題も心理的問題も軽減されるはずだと多くの人々が考えているからだ。だがその方法論では症状の一部しか軽減されない。
■イギリスで行なわれた701名を対象とした比較試験では、数回にわたる集団での認知行動療法によって慢性腰痛の疼痛と活動障害が改善され、その効果は12ヶ月も持続しただけでなく、費用も一般的な腰痛治療の約半分に抑えられた。→HP記事へ
■腰痛疾患の分野では十分な試験が行なわれることなく新しい技術が普及してしまう。アメリカでは脊柱管狭窄症に対する固定術の実施率が15倍に増加したが、それに伴い重篤な合併症、死亡率、再入院による医療費なども増加している。明らかに過剰診療。→HP記事へ
腰痛の改善を妨げる心理的社会的因子について
■ブルーフラッグ:職場に関連した問題。肉体労働、満足度の低い仕事、職場の社会的支援不足、ストレスの多い仕事、労働環境や作業内容の変更が行なわれない、労使間のコミュニケーション不足など。
■ブラックフラッグ:患者をとりまく社会的環境に関する問題。会社や医療関係者との意見の不一致、補償問題、各種手続きの遅延、恐怖心を煽るメディアに対する過剰反応、家族からの否定的反応、社会的孤立や社会的機能不全、役立たない職場復帰計画など。
■腰痛問題が解決しないのは、医療提供システムに欠陥があるからだという。画像検査、鎮痛処置、手術を受けさせた方が、過剰な恐怖心、不適切な疼痛行動といった心理社会的危険因子を取り除くより容易である。しかも現行の健康保険制度は、慢性腰痛に役立つサービスを提供できる構造になっていない。
■多くの研究者が腰痛に取り組んできたにもかかわらず、依然として医学的・社会的大問題である。効果のない治療と見当違いの政策によりこの危機が雪だるま式に大きくなっている。「腰痛は20世紀の医学的大問題だったがその遺産は21世紀も拡大している」。→HP記事へ
■『Tackling Musculoskeletal Problems』には筋骨格系疾患患者の職場復帰を妨げる重要な心理社会的因子(イエローフラッグ、ブルーフラッグ、ブラックフラック)だけでなく、時系列に沿った段階的治療手順が示されている。→HP記事へ
■発症後2~6週間で行なうべきは簡単な介入である。すなわち、治療+職場環境の調整、心理社会的問題の特定、仕事や活動障害の早期復帰計画を作成すること。ニュージーランドガイドラインである『急性腰痛と危険因子ガイド』では、もっと早い段階でイエローフラッグを評価するよう勧告している。
■発症後6~12週間でシフトチェンジして加速する。すなわち、回復の妨げとなる障害のチェック、職業的リハビリテーションの拡大、効果のない治療の中止だ。繰り返しになるが、筋骨格系疾患を医学的問題として治療すると失敗する。イエローフラッグ、ブルーフラッグ、ブラックフラッグを解決すべき。
■発症後12週間を超えた時点で集学的アプローチを加える。すなわち、治療計画と到達目標の再検討、認知行動療法への転換、仕事や活動を再開するためにすべての関係者が最大限の努力をする。とはいえ、認知行動療法的アプローチはできるだけ早い段階で加えた方が慢性化を防ぐと思われる。
■発症後26週間で社会的解決へ移行する。すなわち、目標を明確にすると同時にコミュニティサポートの提供、すべての関係者がコミュニケーションを維持、不必要な医学的介入の回避だ。ここまでくるとブラックフラッグへの介入が重要と思われる。医療関係者、政府、企業、メディアを変える必要あり。
■腰痛の原因はいまだに謎だが、椎間板変性を腰痛の原因と考える脊椎外科医は23%のみで、その患者に固定術か椎間板置換術を選択すると答えた脊椎外科医はわずか1%。もし自分が患者なら99%が保存療法か放置すると回答。→HP記事へ
■【患者様へのアドバイスについて】
1:速やかに回復する、効果的な改善策、無理のない生活様式、再発の予防法、レッドフラッグがなければ検査は不要、症状が長引く場合の検査法と治療法の有効性と危険性など、患者に正確な情報を与える。(確証度B)
2:急性腰痛の治療においては職場での腰痛教室(古典的な腰部の解剖学・姿勢・日常生活に関する教育)は臨床現場で行なう患者教育の助けになる(確証度C)
3:職場以外での腰痛教室の有効性はまだ証明されていない(確証度C)
4:急性腰痛にとっては長期間の安静臥床(安静に寝ている)よりも、痛みの許す範囲内で徐々に日常生活に戻る方が効果的(確証度B)
5:4日以上の安静臥床は筋力低下を招くために急性腰痛の治療として推奨できない(確証度B)
6:急性腰痛に安静臥床(安静に寝ている)の必要はない。ただし、主に下肢痛を訴える患者で初期症状が強い場合は、2~4日間の安静臥床を選択肢として選ぶことができる(確証度B)
7:急性腰痛患者は、長時間座り続けたり、重い物を持ち上げたり、物を持ち上げる際に腰を曲げたり捻ったりなど、脊柱に構造的負担がかかる特別な活動を一時的に制限したり避けたりることで楽に過ごせる可能性がある(確証度D)
(参考)従来の腰痛概念に重大な転機が訪れたのは、アメリカ医療政策研究局(AHCPR)が1992年までに発表された急性腰痛に関する論文の体系的レビューを実施し『成人の急性腰痛診療ガイドライン』を報告した1994年のことである。
『成人の急性腰痛診療ガイドライン』では科学的事実を次の4段階に分類している。
A:強力な事実に即した根拠(多数の質の高い科学的研究)
B:中等度の事実に即した根拠(1件の質の高い科学的研究か多数の妥当な科学的研究)
C:限られた事実に即した根拠(腰痛患者に関する1件以上の妥当な科学的研究)
D:事実に即した研究としては基準を満たさないと判断した研究)。
しかし腰痛に関する比較試験は全体の0.2%しかないため「A」の科学的事実は存在しない。
腰痛に関する海外の研究レポート
イギリスの腰痛診療ガイドラインは心理社会的因子について次の4つの事実を指摘している。
(1)心理社会的因子は治療とリハビリテーションの成績に影響を与える。
(2)心理社会的因子は自覚症状や他覚所見よりも慢性化の危険因子である。→HP記事へ
(3)心理社会的因子は慢性腰痛や活動障害において重要な意味を持つ。
(4)心理社会的因子はこれまで考えられていたよりもはるかに早い段階で重要な意味を持つ。
ゆえに、患者の心理的・職業的・社会経済的因子に目を向ける必要がある。→HP記事へ
椎間板ヘルニアと診断された下肢痛患者328名を椎間板摘出術群と標準的顕微鏡下椎間板摘出群に割り付けたRCTによると、疼痛改善率は手術群より顕微鏡手術群の方が優れていた。→HP記事へ
50~94歳の1407名を対象に骨密度とX線撮影で脊柱後湾(亀背)を調査した結果、椎体骨折のある方が後湾は強かったが多くの後湾に骨折は認められなかった。高度後湾の場合でも椎体骨折や骨粗鬆症は確認できなかった。原因不明。→HP記事へ
脊柱の高度後湾(亀背)は高齢者の20~40%に見られると推計されるが、診断基準もなければ原因も転帰も明らかでない。一部の医師は骨粗鬆症による椎体骨折が原因と考えているものの、その多くは椎体骨折が認められない。原因不明。
脊柱の高度後湾は高齢者の不健康と関連がある。したがって高度後湾を老年期症候群、すなわち人体の複数のシステムが障害され、その影響が蓄積されて環境の変化への対応が難しくなると発症する、多因子性の病態と認識すべきである。
脊椎固定術を受けた労災患者と保存療法を受けた患者を比較した後ろ向きコホート研究によると、椎間板変性、椎間板ヘルニア、神経根障害と診断された労災患者の固定術は、活動障害、オピオイドの使用、長期欠勤、復職困難を増加させる。
脊椎固定術を受けた783名の中から労災患者60名の転帰を調べた結果、2年後の改善率は活動障害が19%、健康状態が16%でしかなく、疼痛スコアもかなり高かったことから、労災患者に対する脊椎固定術は危険な賭けでしかない。
脊椎固定術を受けた労災患者1950名を対象とした後ろ向きコホート研究によると、術後2年後の活動障害は63.9%、再手術率は22%、合併症は11.8%に認められた。長期活動障害の予測因子は心理社会的因子であることが判明。
腰痛で長期欠勤している患者975名を3年間追跡したランダム化比較試験によると、200日後の復職率は教育プログラム(従来の常識はすべて忘れて腰痛を怖がるなという指導)群が70%だったのに対して、標準的治療群はわずか40%でしかなかった。→HP記事へ
腰痛患者161名を時代遅れの小冊子群と新たな腰痛概念に基づく小冊子群に割り付けて1年間追跡した比較試験によると、新たな小冊子群は動作恐怖が低下すると共に回復が早いことが判明。従来の考え方を改めるのは有効な治療法である。→HP記事へ
オーストラリアのビクトリア州で「腰痛に屈するな」という大規模なメディアキャンペーンを実施し、近隣のニューサウスウェールズ州と比較した結果、次の4点が明らかとなった。→HP記事へ
(1)キャンペーン群では腰痛患者の動作恐怖スコアが改善した。
(2)キャンペーン群では腰痛による欠勤日数が減少した。
(3)キャンペーン群の労災申請件数は15%減少した。→HP記事へ
(4)キャンペーン群の医療費は20%減少した。
すなわち、正しい情報提供だけで33億円を超える経費(労災補償費と医療費)を削減できたのである。日本でできないはずがない。→HP記事へ
椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を厳密に検討した結果、椎間板ヘルニアの手術成績は短期的に見れば良好だが長期的に見れば保存療法とほとんど変わりがなく、腰痛は心理社会的因子の影響を強く受けていることが確認された。→HP記事へ
腰・下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者84名を対象に、画像所見、理学所見、心理テストと手術成績との関係を調べた結果、手術成績と最も関係が深かったのは、画像所見でも理学所見でもなく心理テストだったことが判明。→HP記事へ
椎間板切除術を受けた患者45名の治療成績に影響を与える因子を分析した結果、職場復帰状況は画像所見や臨床症状とは無関係で、心理的因子(抑うつ)と職業上の心理社会的因子(職場での心理的ストレス)の影響が強いことを確認。→HP記事へ
椎間板ヘルニアと診断された腰下肢痛患者46名と健常者46名をMRIで比較した結果、症状の有無は職業上の問題(心理的ストレス・集中力・満足度・失業)と心理社会的問題(不安・抑うつ・欲求不満・夫婦関係)の影響が大きい。→HP記事へ
腰痛のない大学生25名を対象に腰への負担に対する心理テストと性格特性の影響力を調べた結果、心理的ストレスは単独で腰痛の原因になり得るだけでなく、内向型と直感型の性格特性は心理的ストレスによって腰痛発症リスクが増大する。→HP記事へ
腰下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者69名を対象に、椎弓切除術群と椎弓切除術+固定術群の術後成績を3年間追跡した比較試験によると、優または良と評価できた割合は椎弓切除術群が71%で椎弓切除術+固定術群が53%だった。→HP記事へ
脊柱管狭窄を伴う変性すべり症患者76名を対象に、器具固定群と骨移植固定群の術後成績を2年間追跡した比較試験によると、器具固定によって骨癒合率の向上は認められるものの、それが必ずしも臨床症状の改善に結びつかないことが判明。→HP記事へ
慢性腰痛を訴える変性すべり症患者130名を対象に、器具固定群と骨移植固定群の術後成績を2年間追跡した比較試験によると、骨癒合率と満足度に差はないが器具固定群は手術時間、出血量、再手術率を増大させ、深刻な神経損傷を招く危険性大。→HP記事へ
分離すべり症患者44名を対象に、腰椎後側方固定術群と後方侵入腰椎椎体間固定術群の術後成績を2年間追跡した比較試験によると、複雑で大がかりな手術よりも比較的単純な方が成績は良いことが判明。→HP記事へ
脊椎固定術に関する論文47件を厳密に検討した結果、優または良と評価できたのは平均68%だったが、論文によっては15%~95%の開きがあり、研究デザインにも不備があるため脊椎固定術の有効性を示す証拠は見つけられなかった。→HP記事へ
脊柱管狭窄症と診断された腰下肢痛患者88名を対象に減圧椎弓切除術の成績を6年間追跡した結果、1年後の改善率は89%だったが6年後には57%に低下し17%は再手術を受けていたことから、これまで報告されていた成績より悪い。→HP記事へ
脊柱管狭窄症への減圧椎弓切除術に関する論文74件を厳密に検討した結果、優または良と評価できたのは平均64%だったが、論文によっては26%~100%もの開きがあり、研究デザインにも不備が多いためその有効性は証明できない。→HP記事へ
腰痛患者520名を対象に診療ガイドラインに従った治療群と従来の治療群の治癒率、再発率、満足度、医療費を1年間追跡して比較した研究によると、従来の治療群よりガイドライン群の方がすべての面でかなり優れていることが判明。→HP記事へ
ありふれた症状を訴える患者200名をプラス思考で接した治療群と無治療群、マイナス思考で接した治療群と無治療群に割りつけた比較試験によると、2週間後の改善率は治療の有無に関わらずプラス思考で接した群の方がはるかに高かった。→HP記事へ
患者に不安や恐怖を与えると間違いなく痛みが増幅する。このノーシーボ効果は想像以上に強力で、ヴードゥー死、タブー死、ノスタルジー死で証明されているように命に関わることさえある。→HP記事へ
椎間関節症候群への注射療法に関する論文を厳密に分析した結果、椎間関節内へのプラシーボ(生理食塩水)注射は、ステロイド剤や局所麻酔剤と同等の改善効果があることから、椎間関節症候群という病名自体が神話の可能性がある。→HP記事へ
腰下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者52名を対象に、ラブ法群とキモパパイン注入群の術後成績を1年間追跡した比較試験によると、ラブ法群は85%でキモパパイン群は46%の改善率だった。腰痛の改善率も特にラブ法群が優れていた。→HP記事へ
※ラブ法:ヘルニア(髄核が飛び出た部分)を切除する手術方法
※キモパイン注入:タンパク質融解酵素を用いて髄核を溶かす方法
坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者141名を対象に、キモパパイン注入群と経皮的髄核摘出術群の術後成績を1年間追跡した比較試験によると、6ヶ月後と1年後のどの時点においても改善率はキモパパイン注入群の方が優れていた。→HP記事へ
坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者126名を対象に、保存療法群とラブ法群の治療成績を10年間追跡した比較試験によると、1年目まではラブ法群が優れていたが4年目以降は両群間に差はなくなっていた。長期成績は両群とも同じ。→HP記事へ
椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を分析した結果次の6点が判明した。
(1)椎間板ヘルニアが確認された2ヶ月間の保存療法に反応しない坐骨神経痛患者はそのまま保存療法を
続けるよりラブ法を実施した方が早く改善する。→HP記事へ
(2)4年~10年の長期成績という観点から見るとラブ法と保存療法の効果に差は認められない。
(3)顕微鏡下髄核摘出術と経皮的髄核摘出術が腰痛に効果があるという証拠はない。
(4)経皮的髄核摘出術はラブ法より再手術率が高い。→HP記事へ
(5)椎間板摘出術は比較的安全な治療法とされているが、これまで考えられていた以上に再手術を
必要とする例が多い。
(6)椎間板ヘルニアに対する手術成績は、心理社会的因子の影響を強く受けている。→HP記事へ
椎間板摘出術が予定されていた腰下肢痛患者84名の治療成績を、神経学的所見、SLR、画像所見、心理テストの4項目で比較した結果、治療成績と最も関係が深かったのは、理学所見や画像所見ではなく心理テストだったことが判明。→HP記事へ
椎間板摘出術を受けた患者46名を2年間にわたって追跡調査した結果、職場復帰には心理的因子(抑うつ状態)と職業上の心理社会的因子(職場での精神的ストレス)が深く関与していて、画像所見や臨床症状は無関係であることが判明。→HP記事へ
■腰痛に対する脊椎マニピュレーションに関する論文58件をメタ分析した結果、3週間以内に腰痛が回復する確率は50~67%だった。慢性腰痛に対する効果は不明としながらも、急性の非特異的腰痛には一時的な効果があることが判明。→HP記事へ
■筋骨格系疾患に対する超音波療法に関する123件の論文を吟味した結果、超音波療法が有効だという科学的証拠は確認できなかったことから、超音波療法をはじめとする受け身的な物理療法は、臨床的に何ら影響をおよぼさないと結論。→HP記事へ
■慢性疼痛に対する鍼治療の有効性に関する51件の比較試験を吟味した結果、鍼治療の効果はきわめて疑わしいと結論。鍼治療の有効性を主張するにはさらなる臨床試験が必要。いずれにしろ物理療法の有効性は科学的に証明されていない。→HP記事へ
■立ち仕事をしている女性の腰痛患者96名を対象に行なったクロスオーバー試験によると、インソールの使用によって腰痛が緩和したのは44%で、3%は悪化し、51%は変化がなかった。インソールは立ち仕事での腰痛を緩和する可能性(44%だけど)。→HP記事へ
■腰痛患者144名と健常者138名を対象に骨盤の歪みを厳密に測定して腰痛との関連を調べた結果、どのような臨床的意義においても骨盤の非対称性と腰痛は関連していないことが判明。骨盤の歪みが腰痛の原因というのは迷信に過ぎない。→HP記事へ
■18~40歳までの急性腰痛患者を対象に4週間追跡した比較試験によると、モビリゼーション群とマニピュレーション群の改善率は4週間後には差がなくなるものの、マニピュレーション群は最初の1週間で急速に改善することが判明。→HP記事へ
■小売店の資材運搬担当者9,377名を対象とした6ヶ月にわたる前向きコホート研究によると、腰部サポートベルト毎日装着群、週1~2日装着群、非装着群の3群を比較した結果、腰痛発症率も労災申請件数も減少しなかった。→HP記事へ
■急性腰痛患者186名を対象に2日間の安静臥床群、ストレッチ群、日常生活群に割り付けた比較試験によると、ストレッチ群は安静臥床群より欠勤日数が少ないものの日常生活群には及ばないことが判明。急性腰痛の特効薬は日常生活の維持。→HP記事へ
■健常者402名を腹筋強化運動+教育プログラム群と教育プログラム群の2群に割り付けて2年間追跡した比較試験によると、両群間の腰痛発症率には差が認められなかったことから、腹筋強化運動は腰痛を予防できないことが判明。→HP記事へ
■航空機製造会社に勤務する3020名を対象とした4年以上にわたる前向きコホート研究では、腰の柔軟性を測定することで過去の腰痛歴や将来の腰痛発症率は予測できないことが判明。腰痛疾患に対するストレッチの有効性に疑問あり。→HP記事へ
■ストレッチ運動と筋肉痛やスポーツ外傷に関する7件の比較試験を吟味した体系的レビューの結果、運動前後のストレッチ運動では筋肉痛を予防できないし、スポーツの前にストレッチ運動を行なってもスポーツ外傷は予防できないことが判明。→HP記事へ
■腰痛に対する運動療法をテーマとした11件の比較試験をレビューした結果、急性腰痛(6週未満)に有効な運動療法は存在しないものの、亜急性腰痛(6週~3ヶ月未満)や慢性腰痛(3ヶ月以上)には運動療法が有効であることが判明。→HP記事へ
■27,801名を対象としたアンケート調査から、急性腰痛患者の86.2%は2週間以内に治癒することが判明。この86%という自然治癒率とプラシーボの70%を超えられない治療法は価値がないどころか治癒を妨げていることになる。→HP記事へ
■急性腰痛患者203名を対象に2日間の安静臥床群と7日間の安静臥床群を比較した比較試験によると、3週間後の欠勤日数は2日間の安静臥床群の方が45%少なかった。急性腰痛に対する安静臥床は欠勤日数を増やすことが証明される。→HP記事へ
■1966年~1996年に発表された急性腰痛患者に対するアドバイスに関する論文をレビューした結果、安静臥床は効果がないばかりか回復を遅らせるが、日常生活を続けると職場復帰が早く、慢性化を防ぎ、再発率も低下することが判明。→HP記事へ
■安静臥床に関する39件の比較試験をレビューした結果、安静臥床によって改善が認められた研究はひとつも存在しない。激痛のために動けない場合は別として、急性腰痛患者が安静に寝ているのは有害で危険な行為。即刻やめさせるべき。→HP記事へ
■6週間以上持続する腰痛患者151名を対象とした牽引群とシャム(見せかけ)トリートメント(擬似牽引)群に割り付けたランダム化比較試験(RCT)によると、3ヵ月後と6ヵ月後のどの時点においても両群間の疼痛軽減率に差は認められなかった。→HP記事へ
■坐骨神経痛患者を対象とした牽引群とシャムトリートメント(擬似牽引)群に割り付けた二重盲検ランダム化比較試験によると、両群の間に疼痛や理学所見の差は認められなかった。腰痛や坐骨神経痛に対して牽引が有効だという証拠はない。→HP記事へ
■頚部痛と腰痛に対する牽引に関する7件のRCT(ランダム化比較試験)をレビュー(批判的に吟味)した結果、どの研究からも牽引の有効性は認められなかった。腰痛や坐骨神経痛に牽引が有効だという証拠は今のところ存在しない。→HP記事へ
■腰のX線撮影による放射線被曝量は、胸の写真に換算すると150回分に相当し、4方向から撮影した場合、卵巣への被曝量は6年~98年間毎日、胸の写真を撮った被曝量に匹敵。→HP記事へ
■腰痛患者421名をX線撮影群と非撮影群に割り付け、9ヶ月間にわたって追跡調査した結果、非撮影群に比べるとX線撮影群は痛みの持続期間、活動障害、健康状態の成績が悪く、受診回数も多かった。不安や恐怖は治癒を妨げている。→HP記事へ
■1985年~1995年に発表された腰痛疾患と画像検査に関する論文672件をレビューした結果、画像所見と腰痛との間に関連があるという証拠は見出せなかった。レッドフラッグ(重篤な危険徴候、例えばガンなど)のない腰痛患者の画像検査は無意味である可能性大。→HP記事へ
■5つの異なる職種の男性149名を対象に、1年間にわたってMRIで腰部を観察した結果、椎間板変性と腰痛との関連はない、職種による異常検出率に差はない、調査期間中に13名が腰痛を発症したがMRI所見に変化はないことが判明。→HP記事へ
■腰痛経験もなくX線所見も異常のないボランティア受刑者50名を対象に、腰部椎間板造影を行なったところ、全例に異常所見が確認された。重大な合併症の危険を冒してまで、侵襲的な椎間板造影を行なうメリットはどこにあるのか?。→HP記事へ
■坐骨神経痛患者55名と健常者37名を対象に、腰部サーモグラフィーの診断精度を比較した結果、健常者の56~81%に異常所見が確認されたことから、腰下肢痛疾患の診断にサーモグラフィーは役立たないことが判明。→HP記事へ
■各国の腰痛診療ガイドラインはレッドフラッグのない患者に画像診断をするなと勧告しているが、レッドフラッグは問診と簡単な理学検査で検出できる。しかし完全無欠というわけではない。感度と特異度もしっかり頭に入れておくべき。→HP記事へ
■1966年~1991年に発表された椎間板ヘルニアに対する脊椎固定術に関する47件の論文をレビューしたところ、脊椎固定術によって優または良と評価できた割合は平均68%だったことが判明。平均70%のプラシーボとほぼ同等。→HP記事へ
■妊婦54名と非妊婦41名の腰部椎間板をMRIで比較した結果、椎間板異常は妊婦群で53%、非妊婦群で54%、椎間板ヘルニアは妊婦群で9%、非妊婦群で10%、椎間板膨隆は両群とも44%と差がなかったことから、妊娠は安全。→HP記事へ
■急性腰痛患者200名、慢性腰痛患者200名、健常者200名を対象にX線撮影で仙骨底角を比較した結果、3群間に差はなかったことから、腰部前弯と腰痛とは一切無関係なので、医師は腰部前彎に関するコメントを控えるべきと警告。→HP記事へ
■腰痛のきっかけとなった出来事に関するアンケートの結果、経済的利益が得られる患者の90%がきっかけありと答えたのに対し、利益が得られない患者は33%しかきっかけありと答えなかった。腰痛の67%が自然発症することが判明。→HP記事へ
■この50年間、生体力学に基づく人間工学的アプローチによって腰にかかる負担は大幅に軽減されてきたが、腰痛患者が減少したという証拠は1つも存在しない。それどころか腰痛患者は年々増加し続けている。腰を守ろうとするのは逆効果。→HP記事へ
■腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した結果、腰痛患者の30%に脊柱側彎症が、1%に前彎過剰が、22%に前彎減少が見られ、健常者の45.5%に脊柱側彎症が、2.5%に前彎過剰が、22%に前彎減少が見られた。→HP記事へ
■腰痛のない25名の大学生を対象に腰椎への物理的負荷に対する心理的ストレスと性格特性の影響力を調べた結果、心理的ストレスは単独で腰痛の原因となり、特に内向型と直感型の性格特性は心理的ストレスで腰痛発症リスクが高くなる。→HP記事へ
■椎間板ヘルニアと診断された強い腰下肢痛を訴える患者46名と、年齢、性別、職業などを一致させた健常者46名の腰部椎間板をMRIで比較した結果、健常者の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性が確認された。→HP記事へ
■腰痛患者100名と健常者100名を対象に腰部X線写真を比較した研究では、両群間の腰仙移行椎、脊椎辷り症、潜在性二分脊椎、変形性脊椎症の検出率に差は認められなかった。画像検査による脊椎の異常所見は本当に腰痛の原因か?。→HP記事へ
■腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した結果、脊椎辷り症、腰仙移行椎、潜在性二分脊椎、椎間狭小、変形性脊椎症、脊柱側彎症、前彎過剰、前彎減少、骨粗鬆症、シュモール結節、圧迫骨折、骨盤傾斜の検出率に差はない。→HP記事へ
■18~50歳までの腰痛患者807名と健常者936名を対象に、腰部X線撮影で脊椎分離症の検出率を比較した結果、腰痛患者群は9.2%、健常者群は9.7%だった。脊椎分離症が腰下肢痛の原因と考えるのは非論理的。→HP記事へ
■発症後1年以内の腰痛患者144名と健常者138名を対象に、骨盤の歪みを厳密に測定して腰痛との関連を調べた研究により、どのような臨床的意義においても、骨盤の非対称性(歪み)と腰痛とは関連していないことが証明されている。→HP記事へ
■60歳の一般住民666名を対象に胸椎と腰椎のX線写真を分析した結果、腰痛経験者の58.7%に、未経験者の57.5%に変形性脊椎症が確認されたが、両群間の検出率に差はなかった。老化よる脊椎の変形は腰痛の原因ではない。→HP記事へ
■港湾労働就職希望者208名、急性腰痛を発症した港湾労働者207名、6ヶ月以上続いている慢性腰痛患者200名を対象に、腰部のX線写真の異常検出率を比較した結果、3群間の加齢による異常検出率に差は認められなかった。→HP記事へ
■腰痛患者200名と健常者200名のX線写真を比較した研究によると、両群間に変形性脊椎症、骨粗鬆症、椎体圧迫骨折などの異常検出率に差は認められなかった。したがって老化による解剖学的変化が腰痛の原因とは考えられないと結論。→HP記事へ
■健常者41名を対象に腰部椎間板を5年間にわたってMRIで追跡調査した結果、物理的負荷(重量物の挙上や運搬・腰の回転や屈曲等)という従来の危険因子は椎間板変性とは無関係で、腰痛発症率はむしろ椎間板変性のある方が低かった。
■男性の一卵性双生児115組を対象にMRIで椎間板変性を促進させる危険因子を調査した結果、椎間板変性は仕事やレジャーによる身体的負担、車の運転、喫煙習慣といった物理的因子より、遺伝的因子の影響を強く受けていることが判明。→HP記事へ
■21~80歳までの腰痛未経験者52名を対象にCATスキャンで腰部椎間板を分析した結果、年齢に関わらず35.4%に何らかの異常が検出され、40歳未満の19.5%に、40歳以上の26.9%に無症候性椎間板ヘルニアが確認。→HP記事へ
■20~80歳までの腰痛未経験者67名を対象にMRIで腰部椎間板を分析した結果、21~36%に椎間板ヘルニアが、50~79%に椎間板膨隆が、34~93%に椎間板変性が確認されたことから、手術の選択は慎重にすべきと結論。→HP記事へ
■20~80歳までの腰痛未経験者98名を対象にMRIで腰部椎間板を分析した結果、少なくとも1ヵ所以上の椎間板膨隆が52%、椎間板突出が27%、椎間板脱出が1%確認されたことから、腰痛下肢痛患者の異常所見は偶然の可能性。→HP記事へ
■急性腰痛患者186例を対象とした比較試験によると、安静臥床群、ストレッチ群、日常生活群のうち、最も早く回復したのは日常生活群で、最も回復が遅かったのは安静臥床群だった。腰痛に安静第一は間違い。むしろ回復を妨げる。→HP記事へ
■腰椎の変形が腰痛の原因でないことは半世紀以上も前から証明されてきた。最も古い対照試験は1953年に実施された腰痛患者100名と健常者100名の腰部X線写真を比較したもので、両群間の変形性脊椎症の検出率に差はなかった。→HP記事へ
■腰痛患者378名と健常者217名の腰部X線写真を比較した研究でも、両群間における変形性脊椎症の検出率に差はなく、加齢と共に増加する傾向が見られることから、変形は正常な老化現象にすぎず、腰痛の原因とは考えられないと結論。→HP記事へ
■「激しい」「突き刺ささる」「ヒリヒリする」等の言葉で頭を満たした場合、レーザー光による熱刺激に対する感受性が増大して疼痛感覚が増強される。痛みに関連した言葉と疼痛刺激が組み合わさるとプライミング効果で疼痛体験が雪だるま式に膨れ上がる。→HP記事へ
■fMRIを用いた研究によれば、痛みに関連した言葉とイメージを思い浮かべると脳のペインマトリックスが活性化するが、注意を逸らせると活性レベルが低下した。ゆえに痛みをくよくよ考えたり頻繁に話題にしたりする患者は自ら症状を悪化させている。→HP記事へ
■医師による患者を安心させる言葉は、腰痛の改善に大きな力を発揮するだろう。そして患者は腰痛についてくよくよ考え込まないこと、四六時中その痛みについて考えないことが重要である。腰痛のことで頭をいっぱいにすると、プライミング効果で疼痛強度が増す。
■これまで職場での身体的負荷(重量物の取り扱い、不自然な姿勢での作業など)、自動車の振動、喫煙などが椎間板変性を加速すると考えられていたが、一卵性双生児を対象とした比較研究によって身体的負荷よりもむしろ遺伝子の影響が大きいことを発見。→HP記事へ
■フィンランドの男性双生児600例を対象とした研究によって、BMI高値、引き上げ筋力が強い、作業強度が高いといった因子はすべて椎間板変性を遅らせるらしいということが、椎間板のMRI信号強度スコアから証明された。→HP記事へ
■医療提供者は腰痛に関する患者の誤解を解くと共に、効果的な管理へ導かなければならない。「患者は生体力学的な視点から生体力学的な異常が見つかることを期待している。何らかの形で我々が患者にそのような考え方を教えてきたのである。患者にも再考を迫る必要がある」by David Shute
■現在の腰痛管理システムはけっして理想的なものではなく、腰痛を悪化させる可能性すらあることを示す豊富なエビデンスがある。→HP記事へ
■ノースカロライナ州の地域住民を対象とした最近の研究によると、慢性腰痛があると回答した成人の割合は、1992年には3.9%だったものが2006年には10.2%にまで増加している。腰痛を生物・心理・社会的問題として対処しないからだ。→HP記事へ
■2年間にわたる追跡調査によると、坐骨神経痛を有する椎間板ヘルニアの手術は保存療法より有益とはいえない。職場復帰率や長期活動障害率においても手術の優位性は認められなかった。坐骨神経痛は手術を受けるか否かに関わらず時間が経てば改善する。→HP記事へ
■坐骨神経痛に対する椎間板手術は、保存療法よりある程度の優位性を示すものの一過性でしかない。ノルウェーの比較試験では1~4年間優位性が持続したが 、オランダの比較試験では1年未満だった。→HP記事へ、→HP記事へ
■精神療法が慢性腰痛の有効な治療法になり得るという考えを理解するのは、患者にとっても医師にとっても難しい。腰痛は身体的に治療されるべき症状であり、腰痛が改善すれば身体的問題も心理的問題も軽減されるはずだと多くの人々が考えているからだ。だがその方法論では症状の一部しか軽減されない。
■イギリスで行なわれた701名を対象とした比較試験では、数回にわたる集団での認知行動療法によって慢性腰痛の疼痛と活動障害が改善され、その効果は12ヶ月も持続しただけでなく、費用も一般的な腰痛治療の約半分に抑えられた。→HP記事へ
■腰痛疾患の分野では十分な試験が行なわれることなく新しい技術が普及してしまう。アメリカでは脊柱管狭窄症に対する固定術の実施率が15倍に増加したが、それに伴い重篤な合併症、死亡率、再入院による医療費なども増加している。明らかに過剰診療。→HP記事へ
腰痛の改善を妨げる心理的社会的因子について
■ブルーフラッグ:職場に関連した問題。肉体労働、満足度の低い仕事、職場の社会的支援不足、ストレスの多い仕事、労働環境や作業内容の変更が行なわれない、労使間のコミュニケーション不足など。
■ブラックフラッグ:患者をとりまく社会的環境に関する問題。会社や医療関係者との意見の不一致、補償問題、各種手続きの遅延、恐怖心を煽るメディアに対する過剰反応、家族からの否定的反応、社会的孤立や社会的機能不全、役立たない職場復帰計画など。
■腰痛問題が解決しないのは、医療提供システムに欠陥があるからだという。画像検査、鎮痛処置、手術を受けさせた方が、過剰な恐怖心、不適切な疼痛行動といった心理社会的危険因子を取り除くより容易である。しかも現行の健康保険制度は、慢性腰痛に役立つサービスを提供できる構造になっていない。
■多くの研究者が腰痛に取り組んできたにもかかわらず、依然として医学的・社会的大問題である。効果のない治療と見当違いの政策によりこの危機が雪だるま式に大きくなっている。「腰痛は20世紀の医学的大問題だったがその遺産は21世紀も拡大している」。→HP記事へ
■『Tackling Musculoskeletal Problems』には筋骨格系疾患患者の職場復帰を妨げる重要な心理社会的因子(イエローフラッグ、ブルーフラッグ、ブラックフラック)だけでなく、時系列に沿った段階的治療手順が示されている。→HP記事へ
■発症後2~6週間で行なうべきは簡単な介入である。すなわち、治療+職場環境の調整、心理社会的問題の特定、仕事や活動障害の早期復帰計画を作成すること。ニュージーランドガイドラインである『急性腰痛と危険因子ガイド』では、もっと早い段階でイエローフラッグを評価するよう勧告している。
■発症後6~12週間でシフトチェンジして加速する。すなわち、回復の妨げとなる障害のチェック、職業的リハビリテーションの拡大、効果のない治療の中止だ。繰り返しになるが、筋骨格系疾患を医学的問題として治療すると失敗する。イエローフラッグ、ブルーフラッグ、ブラックフラッグを解決すべき。
■発症後12週間を超えた時点で集学的アプローチを加える。すなわち、治療計画と到達目標の再検討、認知行動療法への転換、仕事や活動を再開するためにすべての関係者が最大限の努力をする。とはいえ、認知行動療法的アプローチはできるだけ早い段階で加えた方が慢性化を防ぐと思われる。
■発症後26週間で社会的解決へ移行する。すなわち、目標を明確にすると同時にコミュニティサポートの提供、すべての関係者がコミュニケーションを維持、不必要な医学的介入の回避だ。ここまでくるとブラックフラッグへの介入が重要と思われる。医療関係者、政府、企業、メディアを変える必要あり。
■腰痛の原因はいまだに謎だが、椎間板変性を腰痛の原因と考える脊椎外科医は23%のみで、その患者に固定術か椎間板置換術を選択すると答えた脊椎外科医はわずか1%。もし自分が患者なら99%が保存療法か放置すると回答。→HP記事へ
■【患者様へのアドバイスについて】
1:速やかに回復する、効果的な改善策、無理のない生活様式、再発の予防法、レッドフラッグがなければ検査は不要、症状が長引く場合の検査法と治療法の有効性と危険性など、患者に正確な情報を与える。(確証度B)
2:急性腰痛の治療においては職場での腰痛教室(古典的な腰部の解剖学・姿勢・日常生活に関する教育)は臨床現場で行なう患者教育の助けになる(確証度C)
3:職場以外での腰痛教室の有効性はまだ証明されていない(確証度C)
4:急性腰痛にとっては長期間の安静臥床(安静に寝ている)よりも、痛みの許す範囲内で徐々に日常生活に戻る方が効果的(確証度B)
5:4日以上の安静臥床は筋力低下を招くために急性腰痛の治療として推奨できない(確証度B)
6:急性腰痛に安静臥床(安静に寝ている)の必要はない。ただし、主に下肢痛を訴える患者で初期症状が強い場合は、2~4日間の安静臥床を選択肢として選ぶことができる(確証度B)
7:急性腰痛患者は、長時間座り続けたり、重い物を持ち上げたり、物を持ち上げる際に腰を曲げたり捻ったりなど、脊柱に構造的負担がかかる特別な活動を一時的に制限したり避けたりることで楽に過ごせる可能性がある(確証度D)
(参考)従来の腰痛概念に重大な転機が訪れたのは、アメリカ医療政策研究局(AHCPR)が1992年までに発表された急性腰痛に関する論文の体系的レビューを実施し『成人の急性腰痛診療ガイドライン』を報告した1994年のことである。
『成人の急性腰痛診療ガイドライン』では科学的事実を次の4段階に分類している。
A:強力な事実に即した根拠(多数の質の高い科学的研究)
B:中等度の事実に即した根拠(1件の質の高い科学的研究か多数の妥当な科学的研究)
C:限られた事実に即した根拠(腰痛患者に関する1件以上の妥当な科学的研究)
D:事実に即した研究としては基準を満たさないと判断した研究)。
しかし腰痛に関する比較試験は全体の0.2%しかないため「A」の科学的事実は存在しない。